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穴の空いたくつした

ポケモン擬人化企画用のブログ。

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瑠衣とシイナ、炎に閉ざされた過去

前から書きたかったシイナと瑠衣の過去話。
冒頭は以前上げたものとほぼ一緒です。
手が冷えてキーボードが上手く打てなくてあんまり手直しが出来なかった(言い訳

タイトルはツイッターで上げたアニメ風次回予告から引用。
中身はシリアスです。死亡ネタを含みます。ご注意ください。

ちょっと補足。
・昴はシイナの本名。当時は生きてる&美徳の魔法少女やってる。
・瑠衣は両親に家業を継ぐように期待をかけられ、
もともと我儘な性格だったのがさらに荒れてる。
・2人とも中学生で幼馴染。

学校のチャイムが下校時間を告げる。
ばらばらと出てくる学生たちは、皆目前に迫った夏休みに浮かれていた。
瑠衣もまたその1人だった。
高校に上がった先輩に連れられて、大人の監視がない遠くへ行く計画。
想像するだけで胸が躍った。

「瑠衣ちゃん、待ってよ!どこ行くんだよ?」

面倒なのが来た、とため息をつく。
後ろから走ってきた昴の方には目もくれず、歩みを速める。

「いちいちうるさいな、あたしのことはほっとけって言っただろうが」
「放っておけないよ、今だって家とは逆方向に行ってるし!」
「うるさいっていってんだよ、別にどこに行こうと関係ないだろ」
「関係なくないよ!また悪い奴らと一緒にいるって、瑠依ちゃんのお母さんも心配してたよ」
「……へえ、あいつが心配してたって?」

母親を引き合いに出され、思わず足を止める。
振り返り、昴を真正面から見つめた。

「あいつに伝えときな、あんたの娘はとうに死んだ。跡継ぎなんて諦めろ……って。
親から勝手な期待をかけられる気持ちなんて、あんたには分からないだろうよ」
「そんな言い方しなくても……!」
「だいたいあんたも鬱陶しいんだよ、何度も言わせんな!二度とついてくんなよ!」

それだけ一気にまくしたて、今度こそ振り返らずに駆け出した。
後に1人残された昴は、黙って鍵を指でなぞる。

(俺じゃ力不足、なのかな)

魔法少女になったせいで、堕ちていく仲間を見てきた。
いつか彼女もあんな風に堕ちていくんだろうか。
考えるほど不安に負けそうになる。
もっと強くなりたい、彼女を救える力がほしい、力が得られるならどこまでも……

(って何考えてるんだろう、信じて待つって決めたのに)

首を振って嫌な考えを振り払う。
瑠衣ちゃんは強いから大丈夫。簡単に堕ちたりなんてしない。
辛抱強く語りかけていれば、いつか分かってくれる。

「悩んでる場合じゃない、早く行って止めなきゃ」

顔を上げると、瑠衣が去った方向へ走り出す。
***
「確かこの辺に来てたはずだけど……」

瑠衣を追いかけるうちに、大きい小屋の前に来ていた。
窓はないが、人の声が微かに漏れ聞こえる。
まさかこんなところにいるわけないよな、と疑いながらも扉をそっと開けた。

中は暗く、大きな袋やポリタンクがいくつも積み重なっていた。
多くの人影がろうそくと思わしき灯りを囲み、思い思いに騒いでいる。
昴は反射的に息をひそめ、手近な物陰に隠れた。

(ずっと魔法少女と戦ってるせいかな、すっかり余計な警戒心が付いたよ)

とはいえ、用心するに越したことはない。
慎重に影から顔を出し、聞き耳を立てる。
かろうじて見える制服から察するに、近所の高校生がほとんどのようだ。
瑠衣の姿がないかとあちこち見回す。

と、話し声が急に大きくなり怒鳴り声になる。
気づかれたかと慌てて首をひっこめた。
人影が何人か立ち上がり、1人が誰かを突き飛ばし――

「う、うわああっ!?」

積み上げられた荷物もろとも、昴の上に崩れ落ちてきた。
逃げる間もなく下敷きになる。
荷物の中身があちこちに散乱し、灯り代わりのろうそくが倒れる。

「おい何やってんだ、早く戻せよ」
「ちょっと待て、これ何が入ってたんだよ!?」

ろうそくを拾うより早く、タンク内の水がこぼれ炎にかかる。
火は消えるどころか激しさを増し、辺りに広がっていく。

(何ボーっとしてるんだ、早く消さなきゃ)

ざわめく人影に紛れて、瑠衣も呆然と立ち尽くしていた。
それはおそらくその場にいた全員が思っていたことだった。
だが、突然の出来事に、誰も動けずにいた。

「ヤバいぞ、この倉庫、どっかに灯油が積んであるって……」
「それだ!それを先に言え!早く逃げろ!」

誰かの叫び声にこたえるように、奥のタンクがはじけ飛ぶ。
それがスイッチになり、皆ばらばらと扉に走り出す。
瑠衣も人の波に押され、出口に向かう。

「誰か!誰か、助けて……!」

だが良く知った声に、思わず振り返る。
視界のなかにはただ炎が広がるだけで、何も見えない。

「す……昴?いるのか?」
「瑠衣ちゃん!ここだよ、助けて!」

聞き違いではない、と確信する。
今しがたタンクが破裂した方向から声がする。
予期しない事態の連続に、瑠衣はその場に立ちすくんだ。

(どういうことだよ、なんであんたがここにいるんだよ!?)

「危ない!上見ろ、上!」

はっとして見上げると、焼け落ちた棚が倒れかかってきた。
咄嗟に引き戻されて直撃は免れたが、転んだ拍子に足が挟まれる。

「てめえは何やってんだ!いいから逃げるぞ!」
「ま……待って、まだ人が……!」

そのまま力ずくで瓦礫から引っ張り出され、出口へと引きずられていく。
熱と痛みでぼやける視界に、真っ赤な色が広がっていく。
火の粉が爆ぜる音に混じって、
瑠衣の耳には最後まで助けを呼ぶ悲鳴が聞こえていた。
***
異変に気づいた住民の通報によって、すぐに火は消し止められた。
あの時倉庫にいた関係者は事情聴取を受けたが、
瑠衣には特に何も言われなかった。

(あたしが、この一件で怪我したから?……いや、きっとそれだけじゃない)

昴は荷物の下敷きになったために逃げ遅れ、
助け出された時にはすでに全身に火傷を負っていた。
すぐに病院に運ばれたが、数日で息を引き取った。

このことは瑠衣には知らされなかったが、
自身に向けられる雰囲気から察していた。
友人である瑠衣にショックを与えないよう、皆が気を使ってくれているのだと。

(なんであんたが死ぬんだよ……、あたしが助けなかったから?)

入院中、繰り返し問いかけた。
後悔の思いは心の中に、何よりも深い傷を作った。
だがこの事件で傷ついたのは、彼女だけではなかった。

『ずっと友達だと信じてたのに、瑠衣ちゃんは戻ってこなかった。
それどころか、俺を見捨てて逃げたんだ。……絶対に許さない』
『なら付いてこい。大罪の魔法少女として歓迎するぞ。そういや、名前聞いてなかったな』
『俺はシイナ。……シイナ・ディマイズ』


瑠衣が炎トラウマになったのも、大罪堕ちを極端に怖がるのもこの事件のせい。
あとシイナが死んだ理由とか瑠衣を執拗に敵対視している理由も。
本編中でもシイナが美徳さんの前でこの話をぶちまけて、
瑠衣がパニックを起こすというイベントを考えてます。

ちなみにこの後闇堕ちの話に繋がりますが、
あまり細かいことは考えてないので表現が若干食い違ってるかもしれません。
最後の台詞もわりかし適当です。

書ききれなかった補足
・事故の責任を取らされたのは不良グループのリーダー格のみ。
瑠衣にお咎めがなかったのは
偶然巻き込まれた被害者側だと判断されたから、という事情もある。
・高校進学をきっかけに瑠衣は1人だけ雨橋町に引っ越し、
尊敬する兄を手本にして更生を図る。
過去のことを忘れて穏やかに過ごしていた矢先に美徳の魔法少女に選ばれ、
大罪の魔法少女となったシイナと再会を果たす。
・シイナが本名を名乗らなかったのは過去を吹っ切りたかったから、
あるいはいずれ瑠衣に復讐するときに都合が良かったから。
実は深く考えてなゲフンゲフン
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